中学生になってから、毎日休まずに練習に取り組んでいた麗奈の姿を、私は見ている。

 時には友達と遊ぶのも、テレビを見るのも我慢して、楽器と向き合っていた。

 そんな麗奈の努力が、こんなつまらないことで台無しになってしまうの?

「ま、あたしは二年だしさー。来年もあるから、別に今回はダメになったらダメになったでいっかなって」

 微笑んで軽い口調で言う麗奈。

 だけどその笑みには、寂しさが色濃く出ている。

 今まで練習してきたのに、もったいないよ。

 頑張ろうよ。

 ……って、言いたくなったけれど私は堪えた。

 だって麗奈の言う通り、そんな状況じゃ部活に出て頑張るって方が辛いかもしれないって思えたから。

「そっか……。何か私にできることがあったら言ってね」

 そんな、気休めしかいうことのできない自分がやるせない。

「うん。ありがと、ねーちゃん」

 そう返してくれた麗奈が少し嬉しそうだったのだけが、救いだった。