「あっ……」

 私の言葉に驚いて、思わず麗奈は顔を上げてしまったみたいだ。

 しまった、という顔をしてから麗奈はまた俯く。

「ねえ、何があったの? よかったら私に話してよ」

 黙りこむ麗奈に、私はそう声をかけた。

 麗奈は下向いたまましばらく声を発さない。

 だけど私はそれ以上問い詰めるようなことはせずに、静かに麗奈の反応を待った。

 ――すると。

「いやー、ねーちゃんはさすがに誤魔化せないかあ。実はちょっと部内でハブられてんだよねー。あたしとしたことがさー」

 そう言ってぎこちなく微笑む麗奈の目は、いまだに赤いままだった。

 私に心配をかけまいと、いつもの軽い感じで喋るけれど。

 無理しているのが、バレバレだ。

「ハブ……? えっ、吹奏楽部のみんなに?」

「んー。全員じゃないんだけど、主に三年の女子の先輩たちから」

 誰とでも仲良くなれるタイプの麗奈は、今までは対人トラブルなんてほとんど聞いたことが無い。

「どうして?」

 不思議に思った私がそう尋ねると、麗奈は経緯を詳しく説明してくれた。

 少し前に、三年生の男子の先輩から告白された麗奈。