「あっ、いや、そのっ。こうすれば少しは千早くんも温かくなるかなって、思っただけで……」

 本当にそれ以外の気持ちは無かった私は、慌てて言い訳する。

 だけど千早くんは珍しく照れたような顔をして、こう言った。

「……ありがと、嬉しい。亜澄の手、温かいわ」

 その反応は、いつもマイペースな千早くんの違った顔が見られた気がして。

 嬉しいようなむず痒いような……なんだか幸せな気分になった。

 その後、手を握っている間はなんとなく口数が少なくなった私たち。

 だけどなぜか全然気まずい雰囲気はなくって、むしろ居心地がよかった。

 今まで千早くんにはドキドキばっかりさせられていたけれど。

 こんな風にほっこりとした気持ちも、あなたはくれるんだね。