話を聞いていると、先輩がわざわざお父さんに頼み込んで、学校での指導を任せてもらえることになったことがわかった。

先輩はいつもわたしのために動いてくれる。


今回もわたしが気を使わないように、決まるまで教えなかったんだ。

でも、せっかく先輩が作ってくれた機会を無駄にしてしまうことが、少しもったいない気がする。


「ねえ、先輩。その話、やっぱり引き受けてもいい?」

「でも、もうバイトしなくてもよくなったんだろ?だったら……」

「やってみたいなと思ったの」


先輩がわざわざ見つけて来てくれた話だということもある。

でも、このことに挑戦したら、もう1歩だけでも先輩に近づけるかもしれないって思ったから。


それに――


「それにね、お金を貯めようかと思って」

「お金を?でももう実家に振り込まなくてもよくなったって……」

「そうだけどね。今度は自分のためにお金を使おうかなと思って」


今までは何でも我慢してきた。

新しい服を買うことも、人気のコスメを買うことも制限されてきたから。

食費だって切り詰めて、ずっと生活してきた。


これからは少し自分のためにお金を使っても罰は当たらないよね?