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「おい!お前ら、仕事だ!」

 潜入捜査を初めて四日目の午後、アジト内に動きがあった。

「仕事?」

「今日の夜二十一時に、取引したいというヤツがいるとボスから連絡があった」

「今日ですか?」

 今日の夜二十一時の取引……。でもそれは、マトリが仕掛けた罠だった。
 今日の夜二十一時に取引をしたいというのは、マトリのもう一人の捜査官だ。 マトリは早くボスの正体を突き止めたいのか、四日目にして早くも動き出したのだ。

「お前らには、その取引現場に一緒に来てもらう。これはボスからの命令だ」

「ボスからの命令?」

 ボスがついに、動き出してきたか……?そもそもそのボスってのが、何者なのかまだ突き止められていない。
 ボスの正体が分かるまでは、ここにいると思っていたが……。

「そうだ。お前らも勉強してこい、ボスのやり方をな」

 ……ん? ちょっと待てよ、ボスのやり方をってことは……。

「なあ今日は、ボスも来るのか?」

 それって、そういうことだよな?

「もちろんだ。取引の中心は、ボスで動いてるからな」
 
 これはラッキーか……。俺たちの手でボスを捕まえるチャンスが巡ってきたってことか。