来栖の言うことにも、犯人は動じようとはしない。

「なぜこんなことをするんだ? 教えてくれ」

 俺は犯人に、そう問いかける。

「警察になんて話す訳ねぇだろ!」

 やっぱりダメだ……。下手に刺激したら、あの人の命が危ない。
 なんとかしねぇと……。

 だけどそう思った、その時だったーーー。

「おい、麻衣!? お前何やってんだ……!」

「お嬢さん、何してるんだ! 危ないから戻ってこい!」

 俺と来栖たちの間をすり抜けて、麻衣はゆっくり歩き出すのだった。

「麻衣!こっちに戻ってこい!」

 呼び止めようとしたが!麻衣は足を止めない。

「麻衣……!」

「一織! お前まで何やってんだ!」

 麻衣を追いかけようとしたが、来栖さんに止められてしまう。

「来栖さん、離してください!麻衣が……!」

「一織、ちょっと待て!」

 何で行かせてくれないんだよ、来栖さん!

「おい!それ以上近付いたら、お前も殺すぞ!」

 ナイフを持っている犯人は、近寄る麻衣にナイフを向けている。

「麻衣!止まれ! 危ないぞ!」

「一織!……私なら、大丈夫だから」

 と、麻衣は振り返って言ったのだ。