【一織SIDE】



「お疲れ様、捜査二課の皆さん」
 
「マトリ……」

 麻薬組織への潜入捜査が終わって帰宅したのは、五日後のことだった。
 マトリを囮に、俺たち捜査二課と捜査一課合同で仲間の数人を現行犯逮捕した。

 だがボスを捜査二課と一課で探したが、ボスの行方は分からなかった。 結局俺たちは、ボスを取り逃がしてしまった。
 仲間を検挙できても、ボスを検挙出来なれば意味はないと、マトリのボスに愚痴を吐かれたのは言うまでもない。

「今回は俺たちの手柄になっちまって悪いな、一織」

 角田が俺の肩を叩きそう言ってくる。

「元々、お前らの案件だろ」
 
 と、言ったはいいものの、正直な所悔しいのは二課も一課も同じだ。

「でも、悔しいよな?ボスを捕まえられなくて」

「……それは嫌味か、角田」

「いやいや。……まあでも、ボスは必ずまた顔を出すはずだろうけど」

 角田の表情はまだ固いままだ。角田だってボスを捕まえられなくて、悔しいのだろう。

「その時は、お前らが捕まえろよ」

「言われなくても、そうさせてもらうよ」

 本当に角田の言葉は、いちいち嫌味ったらしいな……。