それを多分、今一番美味しいと思ってるのは、角田だろうけど。

「アンタは、ボスの顔を見たことあるのか?」

「いや、見たことはない。 ボスは謎のベールに包まれた男だからな。色々謎だらけの男というしか分からない」

 謎のベールに包まれた男……。一体どんなヤツなんだ、ボスってのは。

「そうなのか」

「いいか、ボスは気が短くてキレやすいとウワサだ。ボスに下手なことしたら、お前らも殺されるかもしれないぞ。気を付けろよ」

 気が短くてキレやすい……。典型的な最悪ボスじゃねぇか。

「わ……分かった。気を付ける」

「それと、取引の中心はボスだと言ったが、ボスは遠くから俺たちに指示を出すのがメインだ。それを実行するのは、俺たちだ」
 
 何? 遠くから指示を出す?
 ということは、ボスはどこにいるか分からないということか?

 それじゃあ捕まえるのは、恐らく困難だろうな……。もしかしたら、逃げられる可能性だってあるかもな。
 ここは俺たち警察と、マトリの勝負所になりそうだ。辛抱強く、そして焦らずに行かないとな。

「なあ、取引のない時は、ボスはいつも何してるんだ?」

 そこに角田が、深く突っ込んでいく。