【麻衣SIDE】




「一織、今日は張り込みなの……?」
 
「いや、今日は違う。 今日は潜入捜査」

 私の彼氏、一織(いおり)の職業は、刑事だ。 一織は刑事という仕事にとても誇りを持っている。

「潜入捜査……? なんの?」

 一織のお父さんも、元々刑事だった。一織はそんなお父さんの背中を見て、刑事を目指すことにしたそうだ。
 一織にとってお父さんは、今もヒーローなんだと思う。お父さんに憧れていたし、お父さんみたいな刑事になりたいって言っていた。

「麻薬組織だよ。 マトリと協力することになったんだ」

「……そうなんだ」

 麻薬組織なんて危ないし、本当は辞めてほしいと思っている。 でも一織にとって、それが仕事なら仕方ないと思う。

「麻薬組織の密売人が、別の暴行事件で逮捕されててさ。そいつらから、密売人の話を聞いたんだ」

「麻薬の密売人?」

「ああ。その密売人が、今週組織と取引するという情報が上がってきてな。それでマトリと協力して、密売人を逮捕するのに潜入捜査をすることになったって訳だ」

 麻薬取引の密売人を逮捕するために……。すごいな、一織は。
 やっぱり一織は、カッコイイな……。私の彼氏でよかった。