高校二年生。
 五月の昼休み。

 頭が痛くて少し休もうと思い、保健室に来た。ドアを開けると先生がいなくて、この学校の有名人であり、イケメンな赤西先輩がいた。

 地味な私とは正反対なタイプの先輩。

 私が入学したての時、廊下を歩いていたら先輩と肩がぶつかった。先輩の見た目が不良っぽくて、怖くて……。謝ると私はすぐに逃げた。あれからすれ違うたびに睨まれている気がする。勘違いかもしれなくて、直接何かされたわけではないけれど。

 彼の雰囲気と清楚なイメージの保健室は、どの角度から見ても不釣り合い。

「どうしたの?」

 彼が質問をしてきた。

「頭が痛くて、少し休んでいこうかと」

「大丈夫?」

「あ、はい……」

 会話は成立しているけれども、怖くて私の心は震え、今すぐここから逃げ出したい気持ちだった。

 その時だった。

「なおれー、なおれー……」

 そう言いながら彼は、私の頭をぽんぽんしてきた。

 えっ? 何? いきなり。しかもとびきりの優しい表情。私の胸の鼓動が早くなった。

 彼と目があい、ドキッとした。
 目をそらし、うつむいた。

 なんだろう、この感覚。
 昔、同じ事をされた記憶が――。