今日見に来た映画は、私も著者買いするくらい大好きな作者のミステリー小説が原作だ。
そういえば、成瀬くんが借りていた本もこの作者の最新刊だった。
あの時は、まさか成瀬くんと映画を見に行くことになるだなんて夢にも思わなかったけど……。
この映画を指定するくらいだから、成瀬くんも好きなのだろうか?
うるさいくらいに私の鼓膜の裏側でずっと心臓の鼓動が聞こえる。静まり返った映画館の中だからなおさら響く。
隣に座る成瀬くんの息遣いだけで、私の心臓はさらに忙しさを増す。
……ああもう、こんな状態で映画に集中できるわけがないって!!
どどどどうしよ!!??
──2時間後。
「すっっっごい良かった!」
興奮が収まらなくて、私は映画館と出てすぐさまに口を開いた。
「ちゃんと伏線も序盤で見せてカットしてても原作まとめてたし、あんな大がかりな密室トリックをちゃんと再現してることとか、何よりあの曲者の探偵をあんな再現度高く表現できるのすごくない!? 助手ちゃんの配役もめちゃくちゃ原作にぴったりだったし、可愛かったぁ~~! あとあと、犯人の教授の過去もちゃんと深堀してくれて娘さんのために残酷にならざる負えなかったって分かるのもすごく良かった!! それに主題歌は続編の匂わせ歌詞だったよね!? 細部まで作り込まれてて私ぐわあああってなっちゃったよ! そう思うよね、成瀬くん!」
勢いよく振り返ると、成瀬くんは面食らったように目を見開いた。
そこで私ははっと我に返る。
や、やばい、興奮のあまりオタク特有のキモ語りしちゃった……。
成瀬くんめちゃくちゃ引いてる。
「ご、ごめん、つい……」
ふ、と軽く笑う声がして、私は伏せていた顔を上げる。
「涼森はよく見てるな。歌詞の内容まで気が付かなかった」
成瀬くんは、そういって目を細めた。
「そっ、そうかな……? あは……」
……今日の成瀬くんは、ほんとによく笑う。キャラ差分更新されまくってる。



