「つ、次!」

 思考が止まりそうになくて、私は遮るように声をあげた。


「つ、次は万全な体調にするから! ご飯も食べよ! この辺においしいピザ屋さんあるの!」

「……え?」


 拍子抜けた成瀬くんの声がして、私は目をぱちくりさせる。

 え、なんか私変なこと言った……?


「次も、あるの?」

「え? ……アッ」


 しっ、しまったぁああああああああああ!!!
 無理やり会話を続けようとするあまり次回のデートに誘ってるやん私ィーーーー!!


「い、いやあの嫌だったら全ッ然大丈夫!! 成瀬くんの都合もあると思うし!! 今のはぜひ聞かなかったことに、」

「嫌じゃない!」

「えっ?」


 成瀬くんが遮るように言う。
 成瀬くんはぎゅうっと眉間に皺を寄せて、続ける。


「嫌じゃない、から。むしろ……、」


 むしろ……?


「……いや、なんでもない」


 それだけ言い残して成瀬くんはふいっと顔を逸らす。


 ……成瀬くんは気が付いているのだろうか。
 ピアスがいっぱいついた耳が、すごく、真っ赤になってるの。


「成瀬く、」


『まもなく15時より上演いたします、劇場版──』


 映画館のアナウンスが聞こえてきて、私は無意識のうちに伸ばしていた手を止めた。

 宙を掴んだ手のひらが沸騰しそうなくらいに熱くて、誤魔化すみたいに頬に触れる。
 同じくらい熱くなった頬では、この熱さを誤魔化すことは出来なかった。