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「はあ……」
女子トイレの鏡の前で、私は何度目か分からないため息をつく。
……冷静に考えて、階段から落っこちて打ちどころ悪ければこの世とおさらばしていたかもしれないのに、助けてくれた命の恩人にする態度じゃない。
事故チューは不運な事故で、夢の中で起こったことと今の成瀬くんとはまったく関係がないのだ。
関係ない、関係ない……って分かってるのにぃ……。
「なんで逃げちゃうの……」
妙に赤くなった顔があんまりに情けないから、思わず鏡に映った自分から目を逸らす。
だって、しょうがないじゃん!
あんなっ……あんな色気のあるお兄さんになった成瀬くんにちゅーされて(夢の中だけど)意識しない方がおかしくない!? 無意識に成瀬くんの口に目がいっちゃいそうになるってのも別におかしい事じゃないよね!?
「って、落ち着け、落ち着け私……!」
ぶんぶんと勢いよく首を振って、大きく深呼吸を繰り返す。
ちゃんと、謝ろう。
それから何としてでも告白の誤解を解いて、私は平穏な高校生ライフを取り戻すんだ!



