「涼森さんには一ミリも伝わってなさそうでしたけど……アッ」


 反射的に飛び出した言葉をわたしは慌てて、手で覆い隠す。

 わたしの馬鹿ぁ!! 絶賛傷心中のひとの傷に塩を塗り込むようなことを言ってどうするの!

 聞こえてないことを祈りながら横へ視線をずらすと、成瀬くんは胸を押さえてぷるぷる肩を震わせながら、「俺なんか……俺なんか……」とブツブツ呟いている。

 だ、駄目だ。めちゃくちゃクリティカルヒットしてる……!


「お、落ち着いて、落ち着いてください! 深呼吸しましょう!?」

「……このままフェードアウトされて捨てられんだ……俺は……」

「すいませんすいません、わたしが余計な一言を言ったばかりに!」

「涼森が俺を好きだなんて、そんなの都合の良い夢だった……」

「えっ、涼森さんの方が告白したんですか!?」

「……」

「あああ違います違います! 決して、涼森さんにそんな気が一切見えなかっただなんて思ったわけでは──ってああ、違いますよ!? もしかしたら涼森さんもめちゃめちゃ成瀬くんのこと好きかもしれないですし! げ、元気出してください!」

「……い」

「え?」

「どれくらい……確率あると思う?」

「……」

「……」

「……」

「………………死ぬしか……」

「ああああーーーーーー、に……3割は固いと思いますよ!? 打率3割は野球だったら一流ですよ!? メジャー行けますよ!?」

「7割の確率で振られるぐらいなら涼森にちょっかい出す男全員殺る」

「駄目に決まってんだろうがーーーーーーーーーー!!??」

「じゃあ他にどうしろって言うんだよ……」

「そ、それは……」