よるの数だけ 守ってもらった




「そら子、せんぱい」


ああ、まだいたんだ。

泣き出しそうな表情に、泣きたいのはこっちだよって言いたくなった。

もう終わりだ。

こいつとこいつの所為で終わり。明日から後輩を道路に突き飛ばそうとしたやつのレッテルを貼られる。こいつみたいに噂される。


「なんでこんなことするんですか…私っ、何かしましたか!?」


存在が嫌。
目の前で跳ばれるのが嫌。
跳べるでしょって、
何もわからないくせに思われているのが許せない。

同じ目に遭って、

それで、黙ってほしい。


こんなこと言ったって絶対に伝わらない。

なんでって、わたしだってもう自分のことが理解できない。



「…行こう((逃さなきゃ))

「え────」


掴まれた腕を引かれて、如月初雪は学校に背を向けてわたしを連れて走り出した。



夜の町が横に逸れて、冷たい空気が身体を貫く。

このひと、こんなに速く走れたの?


わたしの脚は、
たぶん、事故の前と同じように動いていて、
情けなくてしかたないよ。



如月初雪は駅でふたりぶんの片道切符を買って、ちょうど来た電車に乗り込んだ。

わたしよりずっと息を切らし肩を上下させる姿。
そわそわと落ち着きのない様子で、何度かわたしの手を握り直す。たぶん無意識なんだろうけれど、なんでいつまでも離してくれないんだろう。



「何処にいくの?」


行く宛てなんてわたしにはない。

何も言わずに窓の外を眺める横顔に、無視かよ、と文句をつぶやく。


さっきまで人を傷つけようとしていた手を、いけないことを続けてきたこの手を、このひとは躊躇いもなく自分の手に繋げる。

莫迦なひと。