あの日、別れ際に一吹くんは言った。
帰ってきたら一番に私に会いに来ると。
『俺を信じて待っててほしい』
その言葉ははっきりと覚えてるよ。
ただ、それが今日なのはちょっぴり予想外だったけど。
撮影で疲れてる中、会いに来てくれたんだよね。
「大丈夫だよ。その理由を、一吹くんが隠していたことを今日は話してくれるんだよね?」
私の言葉にどこか不安げな表情で頷く一吹くん。
それは過去に私が一吹くんのファンだとカミングアウトした時とよく似ていた。
私は一吹くんに嫌われるのが怖かった。
じゃあ、一吹くんは……?
「しーちゃんは俺がアイドルになった理由って覚えてる?」
「確かスカウトされたからだよね?」
「昔はそう話したよね。だけど、本当の理由は違うんだ。俺がアイドルになろうと思ったきっかけはしーちゃんだよ」
「…………えっ……?」
一吹くんがアイドルになったきっかけが私?
「俺はしーちゃんの側にいるためにアイドルになったんだ」
一吹くんの秘密は、
私が煌のファンだと偽るよりもずっと前から始まっていた──。