【裕太SIDE】



「愛南……」

 隣で眠る愛南の横顔を眺めながら、俺は愛南の頬を撫でる。
 愛南、君は本当に……俺を驚かせる。

 愛莉を失って途方にくれていた俺に、君は【私を愛莉の身代わりにしてください】と俺に言った。
 その時、俺はさぞかし驚かされた。一瞬、何を言っているのか分からなくなるくらい、頭の中が真っ白になった記憶がある。

 でも俺は、そんな愛南を利用した。そんな愛南に「結婚しよう」と言われたからだ。
 愛莉を失ってすぐで、愛南から「結婚しよう」と言われるとは到底思ってもなかった俺は、その提案を受け入れることにした。

 愛南を愛莉の身代わりにしたいと思った訳じゃなかった。 それでも俺は、愛莉と愛南を重ねていたのかもしれなかった。
 愛莉と愛南は双子であることから、幻覚を見ているような気にもなった。 

 でも愛南と結婚して分かったのは、愛南は愛莉と全然違うことだった。
 顔は同じでも、性格も声も話し方も、まるで違う。

 だからこそ俺は、愛南を愛莉と重ねないようにしたんだ。 愛莉のことを思い出す日だって多々あったけど、それでも俺は楽しかった。
 愛南との日々は、俺の中で新鮮さがたくさんあった。