◇ ◇ ◇


 
「ただいま、裕太さん。……裕太さん?」

 夜を十九時過ぎ。仕事を終えた私は、夕食の買い物をして帰宅した。

「裕太さん……?」

 リビングの電気は付いてなかったので、恐らく部屋にいるのだろうと思い、裕太さんの書斎部屋を開ける。

「あ……」

 寝ちゃってるんだ……。

「起こさない方が、いいよね……」

 そう思い私は、そっと静かに部屋のドアを閉めて、夕食の用意を始める。
 今日はビーフシチューを作ることにしたけど、裕太さんは寝てるから起きてから食べてもらおうかな……。

 無理に起こすのも悪いもんね、裕太さんも仕事で忙しいだろうし……。イラストレーターだから、色々と業界からの仕事も来るし、毎日大変そうだ。

「ん、美味しい」

 ビーフシチューを味見していると、ガチャっと部屋の扉が開く音がした。

「愛南……?」

「裕太さん、すみません。 起こしちゃいましたか?」

「……いや、勝手に起きた」

 裕太さんは寝起きだからか、目が少しトロンとしている。

「裕太さん……夕食、食べますか? ビーフシチュー、作ったんですけど……」

「本当に? 食べるよ、もちろん」