「……そっか。そうだったんだ」
「はい。……だから私のことは、愛さなくてもいいです」
私がそんなことを望むなんて……おこがましいだけだ。
変な感情は、裕太さんを困らせてしまうだけだから。
「じゃあ聞くけど……。愛南は、俺のことを愛してくれるのか?」
「……え?」
私が、裕太さんを愛する……? どうなのだろう……。
それは全く分からない。
「夫婦になるんだから、お互いを愛するくらいの気持ちじゃないと、俺は本当の夫婦にはなれないと思う」
「……本当の、夫婦?」
「そうだ、本当の夫婦だ。……俺は愛莉のことを本気で愛してた。だから愛莉と、結婚したいと思ったんだ。 愛莉は俺の人生の全てだったから」
裕太さんからそう言われて、私は何も答えることが出来なかった。
愛莉の人生の全てを捧げようと思った相手が、裕太さんだった。 そして裕太さんにとってのその相手は、愛莉だった。
「……だから愛南も、俺と結婚するなら、俺を本気で愛するくらいの気持ちでいてほしい」
「本気で……愛するくらいの気持ち……?」
「そうだ」
それがどういうことなのかなんて、今は分からない。
でも私は、確かに人を愛してみたい。……裕太さんのその言葉で、そう思ったんだ。



