「愛南……あなた……」

「裕太さんが愛してるのは、愛莉だけだと分かっているわ。……だけどね、それでも私は裕太さんのそばにいたいの。 私も裕太さんのこと、本当に好きなのよ」

 こんなことを言ってしまう自分がおかしいと分かっているけれど、それでも私はこうするしかないんだ。
 この結婚は自分の感情にウソを付いて、幸せになるための道筋を作っただけにすぎない。

「……お母さん、私は幸せになれるなら裕太さんに愛されなくてもいいの。 ただ裕太さんのそばにいられれば、それだけでいいのよ」

「愛南……。あなた、そんなに裕太さんのことを……」

「そうよ……ずっと好きだったの。だけど愛莉の婚約者だったから、何も出来なかった。……でもやっぱり、それでも私は裕太さんが好きなのよ」 

 お母さんは複雑そうな表情をしていたけど、それでも「……分かったわ。愛南が決めたことなら、応援するわ」と言ってくれたのだった。

「認めてくれるの?」

「だって、認めるしかないでしょう?……あなたの決めた人生、なんだもの」

 お母さんは本当は多分、認めたくはないと思う。 でもそれでも認めてくれたのは、愛莉のこともあるのかもしれない。