「お母さん……あのね」

「ん? どうしたの、愛南?」 

 私はお母さんに、裕太さんと結婚することを伝える。

「私ね……私、結婚したい人がいるんだけど」

「え? 結婚したい人……?」

「うん」
 
 私の結婚相手が裕太さんだと知ったら、お母さんはなんて思うのだろう。……多分だけど、反対しそうな気がする。
 だって愛莉の結婚相手だった人と、私は結婚するんだもの。……喜んでもらえるはずが、ないよね。

「まさか愛南に、結婚したい人がいるなんて……。お母さん、驚いたわ」

「そうかな? 私だってもう、そんな年齢だし……」

 と言いつつも、裕太さんの名前は出していいものなのかと、迷ってしまう。

「……そうね。愛南だって、結婚するんだものね」

「うん。……まあね」

 私たちの結婚は、愛で結ばれたものではない。 ただお互いの利害が一致しただけの、結婚でしかない。

「所で愛南の結婚したい人って、誰なの?」

「……裕太さん」

「あら、裕太さんって言うの? 愛莉の結婚相手と、一緒なのね……?」

 どうやらお母さんは、別の裕太さんと結婚するものだと思っているみたいだ。