そして裕太さんは、私にそう言ったんだ。

「……裕太さん?」

「愛南ちゃんがそこまで言うなら……愛南ちゃんのことを利用させてもらうことにするよ」

 そして裕太さんは、私の両手を握りしめてきた。

「遠慮なく身代わりにさせてもらうよ、愛南ちゃん」

「……はい、構いません。利用して、ください」

 私たちはお互いの利害が一致し、結婚することに決めた。

「愛南ちゃんのことは、愛南と呼ぶべきかな?」

「……どちらでも、大丈夫です」

 姉のことは、愛莉と呼んでいたんだ。愛南と呼ばれても不思議はないし、なんて呼ばれても私はいい。

「俺のことは、裕太でもいいよ」

「……いえ、裕太さんと呼ばせて頂きます」

 愛莉は裕太と名前で呼んでいたから、私はさん付けすることにする。
 愛莉と同じ道を歩むなんて、私は本当にどうかしていると思う。

「裕太さん……。私も、裕太さんのことを愛したいと思っています」

「……それなら、愛してくれると嬉しいな」

 裕太さんはきっと、私のことは愛したりしない。裕太さんは、愛莉のことだけを愛しているから。
 でもね、それでもいいんだ、私はーーー。