「でもね、幸せになっていく度に……私、不安になるの」

 裕太さんは私の話を黙って聞いてくれる。

「愛してもらえて嬉しいし、本当に幸せだと思うの。……だけど愛莉のことを思うと、私はこのまま幸せになっていいのかなって、そう思うの」

 私の言葉を聞いた裕太さんは、私の手をそっと握りしめてくれる。そして「愛南、君は幸せになっていいと思うよ」と優しく言葉をくれる。

「本当に……?」

「本当だよ。 君は愛莉の分まで、幸せにならなきゃ」

 愛莉の分まで……幸せに?

「愛莉だってきっと、それを望んでると思うんだ。愛南が幸せでいることが、愛莉にとっても幸せだと思うよ」

「……裕太、さん」

 裕太さんは本当に優しい人だ。私にはもったいないくらいだ。
 そもそも私が裕太さんを愛莉から奪ったのは事実だし、その事実はこれからだって変わらない。
 愛莉に恨まれたとしても、それは仕方がないことだ。 だからこそ、申し訳ないと思う。

 でもやっぱり私は、裕太さんとこれからも生きていきたいと思う。 裕太さんと妻として、これからも裕太さんを支えていきたい。
 愛莉が果たせなかったことを、私が代わりに果たしたい。

「だから愛南、幸せになれ」