「愛南?どうかした?」

「あ、ううん。何でもない」
 
 もし裕太さんと結婚したのが、私ではなく愛莉だったら。……愛莉はきっと裕太さんのことをより幸せに出来たのかもしれない、とさえ思う。
 私は裕太さんに身代わり結婚を提案して、裕太さんはそれを受け入れてくれた。
 だけど本当に、これが正解だったのかは分からない。 愛莉はきっと、私を恨んでると思う。

 今頃幸せになっていたのは、私ではなく愛莉だったから。 私は愛莉を失って悲しみに暮れている裕太さんを、愛莉から奪ったも同然なのだから。
 恨まれたって仕方がないと思う。私も裕太さんのことを愛してしまったからこそ、そう思う。
 裕太さんに愛してもらって、私も裕太さんを愛した。その事実はこれからだって変わらない。

「ねえ、裕太さん」

「ん?」

 私はクレープを片手に、裕太さんに「裕太さんは、私と結婚して……良かった?」と思わず聞いてしまう。
 裕太さんはそんな私を不思議そうに見つめながら、「どうしてそんなこと聞くんだい?」と聞き返して来る。

「……私は、裕太さんと結婚して幸せだって思ってる」
 
 裕太さんはそんな私の頭を優しく撫でながら、「俺も幸せだよ」と微笑みを浮かべる。