今もチャイムが鳴って、廊下の人だかりの方から席に帰ってくる玲人は微笑みを絶やさない。こんないい人が、『普通の高校生活』を送れないわけがない。天使の輪を乗せ背中に羽の生えた後光が挿して見える玲人が、あはは、と笑って椅子に座った。

「歓迎してもらって、嬉しいなあ。この高校に入(はい)れて良かったよ」

にこにこと笑う玲人は本当に心が広い。朝日よりも眩しい笑顔を向けられて、あかねは固まった。

なんて!!! 今、なんて応えればいいの!!!

自分の高校を褒めてもらえたのだ。しかしあかねにとってこの高校はさして特徴のない普通の全日制高校であって、玲人がそんなに喜んでくれるような高校とは思えないのだが……。

「そ……、そっかな……。そう言ってもらえると、在校生としては嬉しい、かな……」

ようように言えたのはそんな返事。それでも玲人は微笑みを絶やさずにあかねの返事を聞いてくれた。

(神か……!!!)

あかねは本日何度目になるか分からない推しの尊さに、心の中でむせび泣いた。