「うう……っ、ごめんね、玲人くん。何時か玲人くんが普通の高校生になってることを見守れるようになるからね……」

涙を流しながら独りごちるあかねに、優菜は笑った。

「あかねもいい機会だし、現実見たらいいのに。画面の向こうの人とは恋愛できないでしょ?」

優菜の言葉にあかねはガタンと椅子を蹴った。

「玲人くんは私の生きる希望だったの!! 玲人くんと同じ時代を生きて、玲人くんの生きざまを見続けて、玲人くんを励ます存在(ファン)でありたかったの!! それが失われてしまったの!! そんなの、もう生きる意味ないじゃない……!!」

わあっ、と机に突っ伏して泣きわめくあかねに、優菜は現実を突きつける。

「嘆いていても玲人くんはもう戻ってこないし、学力テストは待ってくれないからね。ほら、現実見た見た」

「優菜は陸上一筋かもしれないけど、その陸上がある日突然奪われたらどうよ!?」

「そしたら別のことを探すわ。嘆く時間が勿体ないからね。あ、ほら先生来たよ」

ぽんぽん、とあかねの背中を叩いて優菜は黒板を向き直った。ガラッと教室のドアが開いて担任が入ってきて、日直が号令をかけて礼をする。泣き顔のまましぶしぶと担任を見て、その姿に目が釘付けになった。……正確には、担任の隣に立っている男子生徒に、だ。