「この世の終わりみたいな顔してるねー。まあそうだろうとは思ってたけど」

二学期の始業式。クラスメイトの優菜はきゃらきゃらとあかねを笑った。笑われたけど、それどころじゃないあかねは果てしなく机にめり込んでいた。

「……もう、何もやる気にならない……。学校来ただけ……、いや、生きてるだけ褒めて欲しい……」

「何言ってんの。二学期入ったらすぐに学力テストあるって先生言ってたじゃん」

昨日一日、テスト勉強どころじゃなかった。いや、正直、今日だってテストどころではない。なんて言ったって、最愛の推しがあかねの人生から消えてしまったのだ。これを絶望の淵と言わずして、なんというのだ。

「生きている意味が分からない……。私に玲人くんを返して……」

そうは言ったけど、あかねは玲人のことを想うと、そんなことを願ってしまう自分が罪深き罪人のように思えた。玲人は『普通の高校生になりたい』と言ったのだ。デビューから五年。『FTF』は其処からの始まりだったけど、玲人はデビュー前から凄く人気があった。人気があるってことは、プライベートも犠牲にして来たってことだろう。そう思うと、玲人が芸能界から解放されて、自由を得たい、と思ってしまうことも否定できなかった。なんといっても玲人の気持ちが最優先だ。玲人はあかねの最推しなんだから。