「れ……、玲人くんはやっぱり私の『最推し』のままなの!! 『推し』に、私たちファンが出来ることは一つだけ。『推し』の生きざまを陰から見守り、その尊さにむせび泣く事だけなの!! だから『推し』との恋愛なんてありえないの!! 玲人くんはいくらでもモテるから、彼女候補は選びようがあるんじゃないかな!?」

玲人はあかねの言葉に少し驚いたような顔をして、……それからふふっと笑った。

「参ったな、一発でOKしてもらえると思ったのに。仮にもファンだった子に振られるって、どうよ、僕」

面白そうに笑っている玲人にこれだけは弁解しておかなければならない。

「れ、玲人くんに魅力がないって言う訳じゃないから!! むしろ、魅力満載過ぎて尊すぎるから!! って言うか、この前まで画面の前で拝んでた相手にいきなり『付き合おう』なんて言われると思わないじゃない!?」

「そこまで思ってくれてたなら、普通は振らないでしょ」

「えええ!? 次元が違うし!!」

「次元ってなんだよ。今此処にいるじゃん」

そう言って玲人はあかねの手を握った。ボン! と顔から熱を吹いて、あかねの体から発熱した。

「わーーーーーーー!!!! 無理無理無理無理――――――――!!!! 握手会でもないのに!!!!」

「握手会って何。傷付くなあ」

「他を当たってください!!」

ブンと腕を振れば、玲人の手はあっけなく外れた。夕陽の色で頬の赤が分からないあかねに、玲人はにこりと微笑みかけた。