『ああっ、玲人くん、その角度の流し目ヤバい!』
『指の振り、美しすぎるわ!』
『もうおぐしからして常人と違う!!』

等々。萌え語りの友からはあかねと同じ熱量の反応が帰ってきていて、あかねとしても存分に推しを愛でることが出来ていた。

「でもまだ五周年だもんね! これから十年、十五年、二十年、って続いて行くんだと思ったら、どんどん大人になってく玲人くんを追いかけられるのは、ファンの幸せの極みだよね!!」
『うん、ホントにそうだね!』

きゃっきゃとチャットで話ながら配信を食い入るように見つめる。そして最後のバラードが終わり、メンバー一人一人からのファンへのメッセージが語られる。玲人が一歩歩み出て、カメラに輝く笑顔を向けた。

『今日まで僕を応援してくれたファンの皆に伝えたいことがあります。僕は今日、この公演をもって……、『FaceToFace』を引退します。五年間、がむしゃらに走り続けてきた。……僕は、普通の高校生になります』



…………。




(えっ?)




何かの聞き間違いだろうか? 今日は4月1日……? エイプリルフールだっただろうか?


あかねはカレンダーを見た。今日はライブ配信最終日の、8月30日。





「えっ?」





画面の中の玲人は大きな花束を受け取り、そのまま他のメンバーに肩を抱かれながら笑っている。






(えっ?)






あまりに突然のことに、脳みそがついて行かないまま、ライブ配信は終わった。ふとチャット画面を見ると、其処には現実を受け止めた萌え語り友たちの阿鼻叫喚の発言が飛び交っていた。





(…………えっ??????)





そんな中、あかねは全く現実を受け入れられないでいた。ぽかんと事務所のロゴマークに切り替わった配信画面を見つめ続け、最後までチャットの阿鼻叫喚発言に入っていけなかった……。