結局出し物はそのまま執事喫茶に決まった。ホームルームが終わり、教室がざわめく中、玲人は隣のあかねに声をかけてくれた。

「高橋さん、僕のことを考えてくれてありがとう」

「ううん……。暁くんが構わないんだったらいいんだけど、……本当に良かったの?」

万に一つでも玲人が無理をしているのだったら、それは『普通の高校生』を楽しめていないことになる。今なら、もう一度話し合いの場を持つことだって可能かもしれない。そう思って確認すると、本当にいいんだよ、と玲人が楽しそうに微笑んだ。

「僕、前の学校のままだったら、準備に時間のかかる文化祭なんて体験できなかったからさ。だから、みんなと文化祭の準備が出来るのが、凄く嬉しいんだ」

そうか。玲人が楽しんでいるのならもう何も言わない。あかねも笑って、そうなんだね、と応えた。