……玲人は『FTF』のリーダーに推薦されたときも遠慮していた。みんなでリーダーの気持ちを持ってやっていけば良いじゃないか、という思想の持ち主だった。

自分一人だけが目立つのではなく、皆で輝きたい、そういう思考の持ち主だった。

だからこそ、あかねはそんな玲人を敬愛し、推しとして崇め奉ることを厭わなかった。

玲人は人格者だ。それ故、入ったばかりのこのクラスでは波風立てないようにみんなの意見に反対しないだろう。

それが玲人の『普通の高校生になりたい』という希望に適っていなくてもだ。そう思ったら、あかねは自然と挙手していた。


「はい、高橋さん」

文化祭委員があかねを挿し、あかねは椅子から立ち上がった。

「……暁くんを一人祭り上げるのはどうかなと思います。もっと……、皆で盛り上げることが大事だと思います」

あかねの心臓は、ドッキンバックンと鳴っていた。

クラスの八割が賛成しているような状況で、反対意見を言うのは勇気が要った。

でも、玲人がこのままお祭りに祭り上げられてしまうのは見過ごせなかったのだ。