きっと、そうやって友達になっているクラスメイトもいるだろうとは思う。

でもあかねは心を入れ替えたのだ。あくまでも玲人の学校生活の防波堤でありたかった。

彼のたぐいまれなるルックスと、元々備わっている華やかなオーラで友達を惹きつけてしまうのはやむを得ない。しかし過剰に降りかかる憧れ故の視線からは遠ざけたかった。あかねがそうしないことで、視線の矢のひとつは確実にへし折ることが出来る。

「えー、であるからして、紫式部は……」

先生の話が続く中、あかねはノートをとる作業の合間にちらと横を盗み見た。

教科書に目を落とす玲人のまつげのなんと長いことか。しかしそんな様子に見惚れないよう、あかねは黒板とノートの上へ視線を動かした。

先生の板書を書きとっておかないと、玲人が何か助けを求めた時に力になってあげられない。あかねは肘が触れそうなくらい近くに居る推しの気配を感じないように努めて、授業に集中した。