今の玲人を取り巻く高校生活は、玲人が思っていたような『普通の高校生』とは程遠いだろう。あかねはあの時そう思い、教室での隣人というポジションに付けながらも、極力玲人と冷静に対応しようとし始めた。
「……どうしちゃったのよ、あかね。玲人くんでしょ? あんなに引退を嘆いて、私にその尊さを褒めちぎった玲人くんが目の前、隣の席に居るのに、あんたおかしくない?」
玲人の転校五日目からこっち、教室で玲人のことをうんともすんとも話題に出さなくなったあかねに、優菜はいぶかしげな顔をしてそう問うた。
「言わないで。私は玲人くんの夢を守るって改心したの。玲人くん、『普通の高校生になりたい』って言ってた。つまり、特別扱いが疲れちゃった、ってことでしょ? 今、ただでさえ学校内外が玲人くんでわいてるのに、今後ずっと私が隣の席で『玲人くん♡』って目で見てたら、玲人くん疲れちゃうと思うのよ」
なぁるほどね、と優菜は頷いた。



