「だって今も、購買部から帰ってくるのが遅いのは、絶対どっかでサインとか握手とか、あと写真とかで呼び止められてるからじゃない!! そんな、ファンじゃない子だって夢中になる玲人くんに、私が我を忘れたっておかしくなくない!?」

「うん、おかしくない」

冷製に返されると恥ずかしいな。でもその通りなのだ。

「だからさ~~、もう、毎日が心臓ジェットコースターすぎて、きっと私はもうすぐ死ぬわ」

「いや、死ななくていいから。生きて推しを拝めよ」

「無理!!! 心臓が飛び出そうっていう経験は、握手会以外ではしないと思ってたのに、それ以上の距離感なんだもん!!!」

恥ずか死しそうになって、わあっと顔を覆うあかねに、でも優菜はやっぱり冷静だ。

「しっかし、暁くんも、毎日毎日続くアピールに、飽きもせずに応えるわねえ……。流石トップアイドルだっただけあるわ」

今だって、トップアイドルだよ!! あんな輝きを放つ人が、一般人の訳あるか!!

そう言いたかったけど、優菜の言うことはきっと『芸能界から退いた』、っていうことを言っていると分かっていたので、あかねはしぶしぶ頷いた。