――見間違いかとも思ったのだけれど。 近づくにつれて、はっきりとしてきた輪郭は、最も会いたかった人物を形作っていく。 あの日のように、塀の上に座り込んで空を見上げていた彼女の横顔から、表情までは読み取れなかった。 「……咲?」 なんでもない、という声色で、その名前を呼ぶ。 緩みかけた頬はマフラーで隠して。 ……あぁ、俺も素直じゃないな。 ゆっくりと こちらを向いた彼女も また、特に表情を変えることはなかった。