桜が咲く頃に、私は

駅に到着して辺りを見回すと、今も何組かが歌っていて、ついついあの時の人を目で追ってしまうけど……いないな。


赤いベースだかギターだか、それが印象的で、その人達の演奏をずっと聴いていた記憶がある。


あの時の私は……まだ今ほど充実していなかったけど、余命のことなんて考えなくて良かったから、その点では幸せだったかもしれないな。


「何ぼんやりしてんだ? 誰かと待ち合わせでもしてるのか?」


とぼけた声に呆れて、振り返ると立っていたのは空。


いつもとは違って、作業服で頭にタオルを巻いている姿。


「一瞬誰かと思ったけど……待ち合わせしてるのはあんたとだよ。もしかして忘れちゃった?」


空の言葉に乗っかってとぼけて見せると、空はクスッと笑って私の頭に手を置いた。


「それじゃあ行くか。何買うか大体決めた?」


店に向かって歩きながら、夢ちゃんは何が欲しいのかを考える。


いつもお世話になってるし、料理だって教えてもらってるから、夢ちゃんが喜ぶ物をあげたいと思うんだよね。


「難しいよね。包丁とか掃除機とかって思ったけど、それって中学生にプレゼントするものじゃないしさ」