桜が咲く頃に、私は

それならそれで羨ましいかな。


私は必死に毎日を生きて、少しずつ変わり始めたという自覚があるのに、空はそんな私よりも多くの幸せを感じてるってことだからさ。


「どうでもいいだろそんなこと。多分、俺の方がお前よりも早く死ぬ。ただそれだけのことだよ。今日の分と、日が変わったらその日の分、済ませようぜ」


「う、うん……」


この瞬間だけは、いつも心苦しい。


仕方のないことだ、やらなければ死ぬとわかっていても、広瀬を裏切っているんだという苦しみに苛まれるから。


だからこそ、唯一救われているのは空が何の感情もなくキスをしてくれること。


罪が赦されるとは思わないけど、広瀬にはっきりと「空とはそういう関係じゃない」と言えることだけが今の私を心を保っていた。


きっと私がこの世からいなくなるその日まで、広瀬に嘘をつき続ける。


向かい合って、どちらからともなく顔を近付けて。


長い、優しいキス。


命が繋がっているのだとわかる、不思議なキスをして。


顔を離すと、空は私の肩を掴んで向きを変えて、背中から腕を回して私を抱き締めたのだ。


「ちょっと……これはダメでしょ? 何やって……」


「悪い。少しだけ。日が変わってキスするまで……怖いんだよ。死ぬのが」