桜が咲く頃に、私は

立ち入り禁止とは名ばかりの、簡単に開くドアを開けて屋上に出ると、柵に持たれて涙を拭っている深沢の姿。


「ねぇ、ここは私と広瀬の場所なんだけど。あんたが泣くなんて珍しいよね」


「は? 別に誰の場所でもなくね? てか、いつも昼休みに姿が見えねぇと思ったら、こんな所にいたのかよ」


こういう時に私は、人に掛ける優しい言葉を持ち合わせていない。


慰めるつもりなんてないけど……ただ、放っておけないと思った。


「で、なんだよ。笑いに来たなら笑えば良いだろ! お前ら、最初から私にはこんな服は似合わないとか思ってたんだろ! 影でずっと、こうなるってわかってて笑ってたんだ!」


そう言って、胸元を引っ張って服を引き千切ろうとした深沢。


私は慌てて駆け寄って、その手を掴むと、深沢の頬に平手打ちを食らわせた。


「あんた、それはやっちゃいけないだろ。どんな思いであろうと、皆で遅くまで残って作り上げたものを、あんたが壊そうとするなよ!」


「お、お前に何が……あんな惨めな思いをさせられた私の気持ちが、チヤホヤされてるお前にわかるかよ!」


涙を流して、私に掴みかかって来た深沢と睨み合って、私は深呼吸をした。