桜が咲く頃に、私は

私の目の前で、広瀬の手を払い除けて立ち上がった深沢。


そして、顔を上げた。


「お前ら、私をバカにしてるんだろ! ブタは床にまかれた飲み物でも飲めって思ってるんだろ! いい気味だって……思ってるんだろ!」


ボロボロと涙を流して、泣き叫びながら教室を飛び出した深沢。


そんなつもりはなかったと、広瀬は悲しそうな表情になって。


「あーあ。まあ、あいつの気持ちもわからなくはないかな。ちょっと同情しちゃうな」


いつもなら深沢とやり合っている翠も、さすがに責める気にはなれないようで。


だから、私は口を開いた。


「私が行ってくる。皆は続けてて」


どうしてそんなことを言ったのか、正直なところ全くわからない。


だけど、このまま放っておいたらダメだと感じたから。


廊下に飛び出し、深沢を追い掛ける。


学校祭の校舎、どこに行っても人がいて、一人になれる所なんてないはずなのに。


となると……行く場所は限られていた。


私の予想通りの場所へと走って行く深沢。


それは……私と広瀬がいつも昼休みにいる屋上だった。


立ち入り禁止の、誰も来ない私と広瀬だけの場所。