桜が咲く頃に、私は

ムスッと客を睨み付けている深沢の目を盗み、教室から出た私と広瀬。


メイド服のままで歩いているから、チラチラと視線が向くのがわかる。


「だ、大丈夫かな。僕達だけ抜け出して」


「別に忙しくないでしょ? 飲み物をカップに入れるだけの作業なんだから。軽食も冷凍食品でしょ?」


衣装に力を入れ過ぎて、肝心のメニューが手抜きになるなんて、深沢も適当なやつだな。


「気付いたの遅かったもんね。家庭科室は他のクラスに押さえられてたし、教室で火を使うわけにもいかないから」


こうして話をしながら学校の中を広瀬と歩くなんてなかったから、なんだか新鮮だな。


普段は誰も来ない屋上で二人で昼休みを過ごすだけだったから、一緒に色んな教室を回っているのが楽しくて。


そう言えば、学校祭の準備ばかりで全然デートなんかも出来てなかったな。


だから、これが広瀬との初デートかな?


自分のクラスのことも忘れて、二人で色んな教室を回って、各クラスの出し物を楽しんで生徒玄関の前を通った時だった。


「あ、早春さん!」


聞き覚えのある声に、外の方を見ると……そこには、満面の笑みで手を振る夢ちゃんと、その横に立つ空がいたのだ。