桜が咲く頃に、私は

それが可能なら、私だって初めては広瀬だって言いたいよ。


感情がないならそれはキスとしてカウントされないって言う理屈が通るなら。


でも、私が毎日空とキスしているのは事実で、広瀬に言えるはずがないんだ。


言えないってことは……そういうことなんだよ。


「いっそのこと、空が好きだったらこんな苦しい思いしなかったのに。浮気だとか二股だとか言われても、気持ちがあるならこんなに苦しまなかった」


「早春……」


天川に対して1ミリもそんな気持ちがないのか。


翠が言った言葉が、今になって頭の中でグルグルと回っている。


気持ちがあってもなくても、私は空とキスしないといけないんだ。


「大丈夫。今日の分、しよう。日が変わったらその日の分も。苦しくても生きることを選んだから。ごめん、考えるまでもないよね」


私がそう言うと、空はゆっくりと顔を近付けて。


何も言わずに唇を重ねた。


広瀬とは違う、命の維持の為のキス。


なぜだかわからないけど涙が溢れてきて、頬を撫でるように一粒、涙がこぼれ落ちた。


でも、いつもと違ったのは、空の唇がほんの少し優しかったような気がする。


気のせいかもしれないけど。