桜が咲く頃に、私は

広瀬のことを考えると、胸の奥がズキズキと痛む。


今までこんなことなかったのに、踏み出した広瀬の小さな一歩が私を苦しくさせる。


余命が減るほど嬉しかったはずなのに。


「そんな辛そうな顔してさ、これから先、大丈夫なのかよ。俺とのキスはただの作業って思えるのかよ」


……返事が出来ない。


空とのキスに、特別な感情はいらないのはわかってる。


でもそっちじゃなくて……広瀬に内緒でそんなことをしているという後ろめたさが苦しい。


悩んでいる私の腕を掴んで、引き寄せる空。


顔が近付いて来るけど……私は小さく「嫌っ」と呟いて顔を逸らしてしまった。


多分、空は私がそう言うとわかっていたんだと思う。


あっさりと手を離して、壁にもたれて小さなため息を一つ。


「そんなんでどうするんだよ。キスしないと死ぬんだぞ? それともこのまま死ぬ気か?」


「ごめん……だけど、もう少し待って。もう少しだけ」


私……こんなじゃなかったのにな。


いつ死んでもいいと思っていたのに。


今は、少しだけ……広瀬が私に愛想を尽かして離れて行くまではって、そう思っている。


いや、きっと最初からその気持ちはあったんだ。


私が死んだ日、告白された時から。