桜が咲く頃に、私は

「じゃあ何、嫌なことがあったんだろ?」


「……彼氏と初めてキスした」


なんだ、そんなことかと、空はバカにしそうだと思っていたけど……そうではなかった。


小さく「あぁ」と呟いて、さらに大きなため息を一つ。


「それは……なんとも」


空が何を考えているかがわかる。


花子の前で私とキスしたことがあったけど、あの時はただ、死ぬ為の準備で花子と別れたいから私を使ったくらいにしか思わなかったけど。


今なら、その気持ちがわかる。


好きだからこそ、別れを選んだって空の気持ちが、ほんの少しだけだけど。


「私さ……嬉しかったのに、突き放しちゃったんだよ。多分、好きになってるんだろうな。だから、なんか申し訳なくて……」


「俺でごめんな。一緒に死んだのが俺じゃなくて、お前の彼氏なら……きっとそんな思いはしなかったんだ」


「バーカ。もしもそうだったら、あいつは私に余命を渡したよ。空みたいに喧嘩にはならなかったと思う」


もしもの話なんて何の意味もないことだけど、話していると気が紛れる。


私って最低だな。


空と毎日キスしていることが後ろめたくて、広瀬を突き放してしまったのに、結局は空の家に転がり込んでさ。


でも仕方ないじゃない!


一日一回、10秒以上空とキスしないと死んじゃうんだから。