桜が咲く頃に、私は

笑顔でそう言った広瀬がいじらしくて……屋上で感じた込み上げるような感覚があって、私は思わず広瀬の頭に腕を回して抱き締めた。


「もう……私なんかの為に頑張っちゃってさ。そんなの……」


好きになってしまうよ……という言葉が出せずに、小さく口だけを動かした。


チャラいやつが、口説くために言っている言葉とは全然違う。


本当に、私のことを想って言ってくれているのがわかるから……胸が苦しくなるんだ。


「あ、あの……え? さ、桜井さん? ど、どうしたの?」


人通りがちらほらある歩道の真ん中で、ギュッと広瀬を抱き締めて、私は小さく耳元で囁く。


「広瀬が一歩踏み出したから嬉しくて。でも……私からはこういうことするつもりなかったのに」


「え、えっ!? ご、ごめん!」


ゆっくりと広瀬から離れると、戸惑っているのがまた可愛い。


「じゃあ、謝るなら広瀬からしてよ。一歩踏み出したなら、もう一歩くらいはね」


広瀬を困らせるつもりはなかったけど、オドオドしている姿がまた可愛くて、つい意地悪を言ってしまった。


だけど……。


「わ、わかったよ」


そう言うと、私の手を取ってビルとビルの間の細い路地に入るという予想外の行動に出たのだ。