桜が咲く頃に、私は

「おっせーんだよ広瀬! 私に飲み物なしで弁当食わせる気かよ! もう半分食い終わったわ!」


「ご、ごめんなさい深沢さん! はい、コーラです」


教室の入口から見てると、クラス一肉々しい女子、深沢姫(ふかざわ ひめ)が広瀬から手渡されたコーラを物凄い顔で睨み付けて。


「お前、コーラっつったら0kcalに決まってんだろ! なんで赤コーラなんて買ってきてんだよ! 私がダイエットしてんのがわかんねぇのかよ!」


「だ、だって昨日は……」


「ふっざけんな! 本当に使えねぇやつだなお前は!」


「ご、ごめん」


結局、お金を払ってもらった様子もなくて、毎日自腹を切ってパシリまでしてるのかと思うと、情けなくてため息が出る。


「はぁ……あのデブ。調子に乗りすぎだろ」


「相変わらずだねぇ。私さ、丁度メントス持ってるんだけど……」


翠が悪そうな顔で笑って、ポケットからメントスを取り出した。


「良いねえ。いい加減あいつにはムカついてたし」


翠からメントスを受け取ると、私は深沢の席に近付いた。


「おい、ブタ沢。テメェのわけわかんねぇブタ語で怒ってないで、わかるように人間の言葉を話せよ。広瀬が困ってんだろ」


ガンッと机を蹴って深沢に文句を言うと、私を睨み付けて来た。