桜が咲く頃に、私は

「わからないならいい。お前が忘れても、俺はずっと覚えてる約束だから」


寂しそうに呟いて、私の手を取った空。


そして、指を絡めたと思ったら、小指を交差させて……指切りのような形になった。


約束……私は、空と指切りをするような約束なんてしたかな。


生き返ってから必死になって生きた二ヶ月半、どれだけ思い出そうとしても、空との約束はなかったように思える。


「ごめん、わからないよ」


「そっか。でもいいよ。早春、一つだけ俺のお願いを聞いてくれるかな」


何か私が約束を忘れているのかもしれない。


その負い目があって、「うん」と呟いた。


「俺が寝るまで、手を握っててくれないか? 早春を感じていられれば、寝るのも怖くなくなるかもしれないから」


「べ、別に……いいけど」


布団に入って、私の手を握る空。


出会った頃は、もっと強気で、私をバカにしてるようだったのに。


今では甘えん坊の子供に見える。


「ねえ空。一日でも長く生きられるようにさ、やっぱりキスはあんたが眠ってから、私がするよ。いいでしょ?」


「……俺、眠れるかな。恐怖に勝てるかな」


「大丈夫。眠るまで手を握っててあげるから」


私がそう言うと、空は微笑んで目を閉じた。