桜が咲く頃に、私は

「仕方ない……か。悪い、葛西、上山。今日行けねぇわ。また連絡する」


立ち上がって壊れたギターを見せた天川。


バンド仲間の二人は、それを見せられたら受け入れるしか出来なかったみたいで。


「あ、ああ。そうだな。仕方ねぇよ。でもお前が生きてて良かったよ」


「てか不死身かよお前。血塗れでゾンビかよ。今日は帰って休めよ。な?」


そう言って天川を慰めていたように見えた。


そっか、そりゃあ天使の前であれだけ「俺の余命だ」って主張するはずだよね。


気遣ってくれる良い友達がいるわけだからさ。


ぼんやりと天川を見ていると、サイレンの音が遠くから聞こえているのがわかった。


「あ、そう言えば警察と救急車呼んだんだった! どうする? ヤバいと思ったけど……なんか二人ともピンピンしてるし。あと、これもさ」


私と天川の間で土下座をしている男性を指差して、引きつった笑顔を浮かべる翠。


「マジか……家出少女が交通事故に遭って、親を呼ばれるのもめんどいし、ピンピンしてっからね。天川空、あんたはどうすんの? 事情聴取とかで時間取られたい? せっかくもらった大切な時間を無駄にしたいわけ?」


私が尋ねると、天川は顔を上げて小さく首を横に振った。