桜が咲く頃に、私は

人通りの多い駅前で、空に手を引かれてビルとビルの間の隙間。


確かにここなら誰の目にも触れないだろうし、大丈夫だと思うけど。


「もう、なんかおかしいよ? 余命が少なくなって、不安になってるのはわかるけどさ。そんなに焦らなくても、空が寝てても私が……」


私がそこまで言うと、振り返った空が私の身体を抱き寄せて、いつもとは違うキスをしたのだ。


10秒。


その間、空の唇が迷っているのが伝わってくる。


今までのように、ただ唇を重ねるだけじゃない。


何だか……。


ゆっくりと唇を離し、フウッと息を吐いた時だった。










「……う、嘘だ」










私の背中に、小さく呟くような声が聞こえて。


慌てて振り返るとそこには……。


「広……瀬。な、なんで」


「さ、桜井さんの姿が見えて……それで……あ、ご、ごめん」


広瀬の悲しそうな顔が私を責めているように見える。


走り去る広瀬を追い掛けることも出来なくて。


私は……私の都合で広瀬を傷付けたんだと、ビルの壁にもたれて天を仰いだ。


「今の……追い掛けなくて良いのかよ。絶対に誤解されたぞ!」