楽しかったんだよ、幸せだったんだよ、

あなたと付き合ってから、ずっとずっと。


繁忙期は7月からだと聞いていた。

毎日ご飯を作ったり、家事をしたりするのは
意外にも苦じゃなかった。


休日が重なったときには

朝から甘えて来てくれるのも、
甘やかしてくれるのも、

全部全部大好きで、愛おしくて。


「9月から新しく始まるプロジェクトチームに参加できることになった」

嬉しそうに報告してくれたあなたの笑顔に

私も心の底から応援しようと決めた。



でもね、私も限界なの。

もう戻れない、この先は続かない。



あなたの邪魔なんて、したくないから。





「病気、ですか?」

「はい。ですが今からでも十分完治を目指すことは十分可能です」


体調を崩すことが増えて、ついに職場で倒れた。


症状は倦怠感に加えて、
自分では思い出せないけれど
何度も同じことを質問していたらしい。


直属の上司の女性に付き添われ病院へ行くと「一過性全健忘」という診断を受けた。

原因は過労だろう、と言われて3日ほど休みをもらった。


それから何事もなく過ごしていたのに

9月にまた倒れてしまい、
病院に訪れたところ
複雑な名前の、

簡単に言えば長期治療が必要な
記憶障害を伴う病気だと診断された。



君に贈りたいメッセージ、
あまりに長く続いてしまう手紙、

どの言葉を選べばあなたに伝わるのだろう。



暗闇に包まれた世界で
あなただけが私の光だったのに。


「新しい仕事すっごく楽しい」

久々にゆとりのある日常が戻ってきて、
話題はお互いの仕事の話になって、

君は眩しい笑顔で教えてくれた。


あなたを邪魔したくない

そんなわがままな私を、どうか許して。