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「美桜さん、おはようございます」

「おはようございます。啓汰さん今日はお休みですか?」

「はい。日曜日なので休みです。美桜さんは日曜日なのにお仕事ご苦労様です。美桜さんが今日は仕事だって聞いて、朝一で来ちゃいました。」

「病院に休みはないですから……。ふふふっ啓汰たら休みの日はいつも、お昼過ぎまで寝てるくせに……」

 そこまで言って美桜は口を押さえる。

 私は何を言っているの……。

 啓汰も美桜の言葉を聞き、目を見開らいている。どうして知っているんだと言いたげな表情に、美桜は眉を寄せた。

 これはさくらさんの記憶だ。

 私のものではない。

 それなのに、その記憶に引っ張られる。

 切なくて、辛い。

「美桜さんはさくらと仲が良かったんですか?」

 仲が良かったか……。

 私はさくらさんに会ったことも、話したこともない。それでも今、一番近くにいるのは私だ。

「そうですね……近い存在です」

「近い存在?」

 啓汰は美桜の変わった言葉の選定に、首を傾げた。

「あっ、もう行きますね。『じゃあ、まったね』」

「…………」

 手を振りながらその場を後にする美桜を、啓汰は無言で見送った。